愛すべきケッタイな国・ノルウェー オスロ便り⑨視覚障碍者向けのガイドツアー@ムンク美術館

こんばんは!しぐりです。
実はまだ昼ですが、あえて声を大にして「こんばんは!」。
芸能業界・舞台関係の方は昼でも夜でも「おはようございます」ってご挨拶されるそうですが、ノルウェーは冬に近づくにつれ、昼でも夜でも「こんばんは」な空気が漂ってまいります。

ところで、ムンク美術館所有の『叫び』が来年2018年に日本へ貸し出されることが決定しましたね。
そのせいか夏以降、それに関する質問を受けることがたびたびあるのですが、みなさん結構ご存知ないのが、ムンクの『叫び』は1枚だけじゃないってこと。
個人所蔵のものも合わせると5つ、そのうち4枚がパステルとか油絵具などで描かれたもので、1つが白黒のリトグラフ作品です。(「1つ」と書いたのは、リトグラフは版画の一種ですので同じものが複数枚刷られて現存しているからです。)
そのカラー作品4枚の中で最後に描かれた1910年制作の『叫び』が日本へ渡航します。

そのムンク美術館で今年から年に4回、視覚障碍者の方のためのガイドツアーが行われていると聞いて、今年最終回の11月18日(土)、取材に行ってまいりました。
取材申し込みの際に対応してくれた職員の方によると、オスロ市内のほかのミュージアムでも、事前の問い合わせ&申し込みがあればその都度対応しているところもあるそうですが、美術館のほうから企画&参加者募集という形で行っているのは、ムンク美術館のほかにノルウェーではないと思う、とのことでした。

ノルウェー国外に目を向けると、視覚障がい者のためのガイドツアーで有名なミュージアムの一つに、イギリスの大英博物館があります。
数年前に春画特別展を開催して一時期世界中の話題となった博物館ですが、「Handling session」という彫刻作品などに「触れて」楽しむ機会の含まれた視覚障がい者向けのガイドツアーを常時設けています。
オスロでも、ヴィーゲラン彫刻公園の横にある「ヴィーゲラン美術館」では、ブロンズ像など美術館内に設置してあるいくつかの彫刻に触れながら解説を聞くことのできる視覚障碍者向けのガイドツアーを行っています。(※要事前申し込み。)でも、ムンク美術館は主に「絵画」のミュージアム。作品に触れて楽しむことが難しい中で、ガイドツアーはいったいどのように行われるのでしょうか。

ちなみに、時間の関係で今回のガイドツアーでは使われませんでしたが、ムンク美術館はキャノンの協力でムンクの有名作品を視覚障碍者の方々に触ってお楽しみいただくのを目的とした3Dパネルを所有しています。
「メランコリー」「絶望」「別離」の3作品がパネルとなっており、初公開された2015年10月以来、シネマ室の横にかけられていて、どなたでも触って筆致などを感じることができるようになっています。残念ながら、この3Dパネルの制作プロジェクトが進行していた期間の展示の関係で、最も有名ともいえる『叫び』や『マドンナ』は3D作品にはなっていませんが……。

今回の参加者は、付き添いの方を含めて10名+盲導犬1匹+ガイドのフレヤさんと私という構成でしたが、この10人強というのが実は理想的な人数だとのこと。それ以上になるとよく聞き取れなかったり、作品に近づきにくかったりするそうです。

まずは入り口で、美術館の間取りや順路、展示の構成、展覧会のコンセプトなど全体的なことを説明・解説。その後それぞれの部屋で再度、部屋自体の描写・説明をおこない、いくつかの絵の前で立ち止まっては、何がどのような構成で書かれているかを客観的かつ豊かな表現で描写し、そのうえで、それぞれの絵の裏にある作者の意図や時代背景などを解説していきます。

フレヤさんによると、参加者の比率としては、もともと視力があって事故や病気で後天的に視力が弱まったり失ったりした方々のほうが多いそうですが、もちろん先天的に視力をなくされている方が参加されることも珍しくないとのこと。
そのような、そもそも「色」などの概念をお持ちでない方にも絵の世界観が伝わるよう、説明の際には「凍るように寒い青」「酸っぱいような緑」といった、五感のうちの視覚以外の感覚を呼び覚ますような形容詞を多用して伝えるように工夫しているそうです。

ある男性参加者は「僕は全く見えていないわけではないけれど、ぼんやりと存在しているものに対して、何が描かれているのかを描写してもらい解説を加えてもらうことは、絵を楽しむ大きな助けになっている。頭の中でどういう絵なのかが再構築されて見えてくるからね。」と言葉での客観描写がいかに助けになっているかを強調していました。
また、別の女性参加者は「私は、絵のぎりぎりまで顔を近づけてじっくり見たいタイプなんだけど、個人で来てそういう見方をしていると、周りに異様な目で見られるでしょう?こういう機会だと安心して心おきなく楽しめるのがいい。」と感想を述べていました。

また、アイフォン専用のアプリですが(ノルウェーでは様々な理由から、障がい者の方はアイフォンを使っていることが多いそうです。)ムンク美術館のアプリをダウンロードすると、視覚障がい者向けの解説がなされたオーディオガイドを自分のアイフォンで聞くことができ、ガイドツアーに参加しなくても、自分のペースで鑑賞しながら楽しんでいただけます。
同じアプリの中には、聴覚障がい者向けに手話で解説されている動画も含まれています。
絵画に「作品という表現媒体を通しての画家とのコミュニケーション」という側面があるとすると、工夫によっては、単純に「見る」以上に、画家が伝えようとしたものを受け取り、感じたり解釈したりすることができるのかもしれませんね。

【ムンク美術館】
住所:Tøyengata 53, 0578 Oslo, Norway
電話:(+47) 23 49 35 00
メール:info@munchmuseet.no
ホームページ:http://munchmuseet.no/en/ (英語、ノルウェー語)

【ヴィーゲラン美術館】
住所: Nobels gate 32, N-0268 Oslo, Norway
電話:(+47) 23 49 37 00
メール:vigeland@kul.oslo.kommune.no
ホームページ:http://www.vigeland.museum.no/en (英語、ノルウェー語)

オスロへはコペンハーゲンからDFDSシーウェイズのフェリーで!
http://www.tumlare.co.jp/guide/cruise/dfds/

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