2019.12.26

ノルウェー季節

愛すべきケッタイな国・ノルウェー  オスロ便り(33)/「アナ雪2」サーミ語吹替版プレ・プレミエ報告】

前回に引き続きグーユールGod Jul!(メリー・クリスマス!)オスロからしぐりです。
毎年この時期になりますと、こんな感じの藁で作ったヤギのオーナメントがお店に出回ります。「ユーレブック(Julebukk)」と言いまして、ノルウェーの伝統的なクリスマスの飾りの一つです。
はるか昔、まだキリスト教がノルウェーに伝わっていなかったヴァイキング時代に、人々は北欧神話の神々を信仰していたのですが、このヤギさんもその名残の一つ。トール(Tor)という雷と戦いを司る神様の乗るワゴンを曳くとされているのがヤギ2頭なんですが、(余談ですがそのヤギたちの名前、「歯ぎしり」と「歯の隙間」といいます。飼い主のセンスを疑っちゃいますが、ま、雷鳴から着想を得た命名なのでしょう。)その残念な名前のヤギさんたちがキリスト教の中に取り込まれていって「クリスマスのヤギ」になったと言われています。

なぜ藁で作られているのかというと、藁が冬の夜に浮かぶ幽霊を象徴するそうなんですね。昔は農村を中心にクリスマスシーズン中にハロウィン的な行事も行っていて、ヤギの仮装をして友人や家族を訪問していたそうなんです。(屠殺したヤギが化けて出てくるってことなのか??)
最近ではノルウェーでもアメリカと同じく、10月にカボチャのハロウィンで騒ぐのが主流になっていますので、このクリスマスのヤギたちも単なるデコレーションの一つになってしまっているそうなのですが、藁ヤギの素朴な風合い、ノルウェーらしくて私は結構気に入っています。

さて今回は、今、日本のみならず世界中で大ブームの「アナと雪の女王2」のプレ・プレミエからのレポートです。アナ雪の舞台がノルウェーをモデルにしていることは一作目から公言されてきていますが、ノルウェーでの全国劇場公開は日本やアメリカより一ヶ月以上遅い12月25日のクリスマス当日。そのプレ・プレミエが12月14日にありまして、ワタクシ行ってまいりました!(以下、ネタバレ含みますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。)

今回のアナ雪2、なんといっても特筆すべきは、これまで様々な国が過去に行ってきた「他民族への支配」と「民族浄化」が背景に描かれていること。そのため、一作目の「独特な個性によって感じる生きづらさを姉妹愛によって乗り越える」という子供たちにも共感されやすい個人の問題と比べて、どちらかと言えば大人向けの作品になっています。

今回の作品には、精霊たちと共に生きる「ノーサルドラNorthuldra」という架空の国の人たちが出てくるのですが、この人たちのモデルとなっているのが「サーミ」(サーメ)という北欧のインディジナスな民族なんですね。(「インディジナスIndigenous」という言葉よりも、「土着の」、とか「原住民族の」と書いた方がわかりやすいとは思ったのですが、どうも字面から偏見的なイメージが想起されてしま恐れがあるような気がしまして、あえてカタカナを使わせてもらいました。)
サーミ人はスカンジナビア半島北部やロシアの北部に、現在の国境が引かれる前から居住してきた民族で、「サーミ語」という独自の言語を持ち、自然の中の精霊を信仰する中で、精霊との仲を取り持つシャーマン「ノアイデ」や、霊的な力を持つとされる歌「ヨイク」をはじめとする固有の文化をはぐくみながら、漁業やトナカイの遊牧で生活をしていたのですが、1800年代半ばごろから、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドそれぞれの国の同化政策により弾圧されてきたという負の歴史を持っています。もっとも、その同化政策以前から、独自の生活様式は認められてはいたものの、居住するそれぞれの国に「国民」として組み込まれ、人頭税や土地・水域の借用権としての税を課されていたという時代が何百年も続いていたんですけどね。この「本来誰のものでもない自然を、国境や税金システムを設定することで支配し、それをもとに異質な民族を支配して、ついには民族浄化へ」という流れ、映画の中のストーリーにもきちんと反映されています。(アナたちの祖父にあたる王が友好を装いつつノーサルドラ支配をもくろんでダムをつくり、最終的にノーサルドラ王を殺したため、ノーサルドラ国は隠れるようにして存続を続ける、という流れのところですね。)

とまぁ、今回のディズニー、がっつりとしたテーマを選んだわけですよ。過去の過ちを知らないまま有耶無耶にせず、直視したうえで、次にやるべきことをやろう、と。アナにも「Just do the next right thing~」と歌わせています。ですので映画の中に、間違っても、インチキ要素や差別的・文化盗用的な表現が紛れ込むわけにいかなかったんでしょうね。サーミ人の文化コンサルタントグループと契約を行った上で制作しています。

どれだけ理解できるかは別として、子供のうちからこういうテーマに自然に触れさせるのも大切なのかもしれませんね。集まったマスコミも、サーミに絡めたインタビューが目立ちました。

映画館の中の2つのホールが会場になっておりまして、1つがノルウェー語吹替、もう1つがサーミ語吹替(!)&ノルウェー語字幕。サーミ語吹替のプレミエとしては、今回が世界初ということでしたが、…私、サーミ語全くわかりませんが…。まぁ字幕読むのに徹すればいいやと、腹をくくってサーミ語の方を観てまいりました。

本編上映の前に舞台挨拶がありまして、ディズニーからのお祝いのメッセージの次に登場したのは、ノルウェーのサーミ議会(Samestortinget)の議長、Aili Keskitaloさん。サーミの伝統衣装で登場し、ノルウェー語とサーミ語で、国際的な影響力を持っているディズニーがリスペクトをもってサーミをモデルにしたことに対する感謝を述べていらっしゃいました。ちなみにサーミ議会とは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド各国にあるサーミの公正な権利のための国会です。イギリスにスコットランド議会があるのと同じようなもんといったらわかりやすいですかね。

観客の中にもサーミ服をきた人がちらほらしていました。赤が太陽、青が月を象徴するそうです。

現在のサーミ人口は約22万7000人と言われていますが、そのうちの3万7800人ほどがノルウェーに居住しています。とはいえ、過去の同化政策の影響もあって、サーミの血は半分とか4分の1なんて人も少なくないみたいですね。また、ほとんどのサーミ人が居住国の言語や英語も話すバイリンガル、マルチリンガルだそうです。サーミ語で学ぶ権利がノルウェーで法制化されたのは1967年のことなのですが、今では、サーミ語の教職課程を取るとその学期の奨学金の返還が免除されるなど、各地の大学でもサーミ語を守る取り組みが行われています。

世界経済フォーラム(WEF)の2019年版「ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)」によるとノルウェーは第2位。観光で訪れてもなんだかいろいろ勉強になりそう。気候や服装、グルメのことは北欧トラベルのノルウェー観光情報で事前チェックして、ぜひ出かけてみよう!

さて、最後にクリスマス&年末年始のショップやレストランの営業状況についてのお知らせです。

年末年始のお店情報

●ショップ

12月、デパートやショッピングモールのような大きなところはここぞとばかりに頑張りまして、クリスマスまでは営業時間を延ばしたり、普段休みの日曜も営業していることが多いです。(スーパーは変わらず日曜定休です。)でも、それも23日まで。24日は大抵どのお店も早仕舞いをいたしまして、遅くても16時には閉まってしまいます。25日26日の2日間はどこも完全休業。27日から通常営業に戻りますが、29日の日曜はお休みです。年末年始は、31日の大晦日は早じまい、1月1日は休業というお店がほとんどです。2日からは通常営業に戻ります。まぁ、どうしても何か必要だというときには、移民系のお店をネットで検索するかホテルのレセプションで聞いてみてください。こういうときこそ稼ぎ時!とばかりに開いているところもあります。

●レストラン

早いところでは23日からクリスマス連休に入り、そのまま1日まで休業しています。24日~26日は営業していても予約のお客様のみ、というところも少なくありませんので、お目当てのレストランがありましたら、ネットやホテルのレセプションで確認してから向かいましょう。少々細かくて見にくいのですが、Visit Osloというウェブサイトが毎年主なレストランのクリスマス~年末年始の営業時間や店舗情報を表にしてくれています。年末年始は比較的営業しているところもありますので、ぜひ参考になさってください。こちらも2日からは通常営業に戻ります。

Visit Oslo 2019年版 レストラン情報(PDF)はこちら

●観光地 24日、25日、31日、および1月1日の4日間は、ほとんどの美術館・博物館が休館となります。フラム号博物館、コンチキ号博物館、ホルメンコーレン・スキー博物館は24日&25日も開いています。また、ヴィーゲラン彫刻公園、アーケシュフス城の敷地、エーケベルグ彫刻公園、自然史博物館の植物園は年中無休です

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