2020.03.13

ノルウェースポット

愛すべきケッタイな国・ノルウェー  オスロ便り(36)/ヘニー・オンスタッド美術館

こんにちは!オスロからしぐりです。今回は本題に入る前にちょっと“ケッタイ”なネタから始めたいと思います。美術館情報だけでいいという方は読み飛ばしてくださいませ。

うちの近所を走る路線バスの一つに「Galgeberg」行き、というのがあるんですが、これ、夜見ると何となくぞわっとしちゃうんですよ。というのも「Galgeberg」って「絞首台の丘」っていう意味なんですね。その名の通り、Galgebergは中世からの処刑場があった場所で、絞首刑だけでなく、様々な形での処刑が行われていたとの記録が残されています。最後の処刑が1815年の斬首刑だそうで、もう200年以上も前に刑場じゃなくなっているのに、地名は変わらずそのままなんです。

今はそこに団地が建っているんですが、工事中には処刑された人のものと思われる骨が出てきたりもしたそうです。(供養とかしたんだろうか?してないだろうなぁ。)地名がそのまんまなもんだから、おのずからバスにも「旧」とかがつくわけでもなく、まんま「絞首台の丘」行きって表示されています。バスに揺られてる乗客が、まるで処刑に連れていかれる人みたいじゃないですか!昼間はともかく、夜も更けて終バス近くなると、乗客もまばらな上、みんな心なしか生気のない顔をして窓の外を眺めていたりしてて、ますます雰囲気が…。

さて、今回は「ヘニー・オンスタッド美術館」という、オスロ郊外の美術館のご紹介です。前回&前々回のブログでお話した通り、今年は国立美術館は閉館中、ムンク美術館の新館オープンも秋まで延期、という状況ですので、その間にオスロでクラッシックなアートを楽しみたい方は、こちらまで足を延ばしてみてはいかがでしょうか、という提案です。

この美術館、ソニア・ヘニーという戦前に活躍していたフィギュアスケーターと、その夫のオンスタッドが1968年に設立し、彼らの私的コレクション110点を寄贈してオープンしたアートセンターです。このソニアさん、フィギュアスケーターとして、すごい人だったんですね。当時のフィギュアと現在のとでは単純に比較できませんが、オリンピック3連覇で今なお殿堂入り、数々の世界大会で金を取りまくって、引退後にはハリウッド映画にも進出しています。(日本語のウィキペディアもあるのでご興味のある方は検索してみてくださいね。)

今の日本はフィギュア大国と言っても過言でないほど、世界の檜舞台で数多くの日本人選手が活躍していますよね。残念なことにソニアは、戦時中にナチスとのつながりがあったため、戦後しばらくは祖国から歓迎されず、亡くなるまでナチスの協力者としてのイメージが影を落としてしまうのですが、もし戦争がなければ、アイスショーからの引退後に母国で後進の育成に尽力して、ノルウェーも今ごろフィギュア大国になっていたのでは、とつい想像を膨らませてしまいます。

この美術館の見どころの一つである、草間彌生の「Hymn of life」。常設展示です。日本人アーティストの作品が常設されていると聞くとなんだか嬉しくなっちゃいませんか?永遠に広がる鏡の世界は異空間に飛び込んだような眩暈を感じます。

メインホールでは、パブロ・ピカソの銅版画の連作が展示されていました。87歳のピカソが約200日の間に一気に制作した347枚もの連作が一堂に公開されていて、晩年なお精力的に活動し続けていたピカソのエネルギーが伝わってきます。

一貫したテーマやモチーフはなく、彼自身の人生やアートを回顧した作品群で、ピカソ自身の姿や、サーカスや道化師、モデルとなった女性たちの姿などが登場しています。この特別展は5月3日までで、その後は、マティスなど美術館の所蔵作品の展示に変わるそうです。

同時に、フランスの印象派の画家、クロード・モネの特別展示も8月23日まで行われています。というのも、今年はノルウェーにとってモネの125周年記念の年。実はモネさん、1895年にノルウェーに数ヶ月間滞在してるんです。当時のフランス画壇の面々が日本の浮世絵に魅了されていたことはよく知られていますが、モネもそのうちの一人。北欧神話の世界であるノルウェーの異国情緒は日本の雰囲気に共通するものがあるのではと夢想し、何年もの間ノルウェーを訪れたいと切望していたそうです。

この美術館の近くにも滞在していまして、そこで制作した作品にフォーカスしての展示です。モネは、例えば代表作の「睡蓮」などで、全く同じ構図の絵を色を変えて描くことで、時刻の移り変わりによる印象の違いをうつしとろうと試みていますが、ノルウェーで描いた絵にもその方法を取っています。コルソス山の作品は、まだ見ぬ憧れの富士山の面影に想いを馳せて描いたものだそうです。

オスロ政府庁舎にあるピカソの作品についての展示も行われていました。政府庁舎のY-blokkaとH-blokkaというビルにピカソの壁画が5点あるの、ご存じでしたか?ピカソがデッサンし、カール・ネシャールがコンクリートに砂を吹き付けて削るという手法で建物に作品を刻み込んだコラボレーション作品で、着想から完成まで17年もの年月が費やされています。

実は、Y-blokkaの方は2011年のノルウェー連続テロ事件の影響で老朽化が進み、今年中の取り壊しが決まっています。その決定に対して、多くの団体が保存すべきだと声をあげており、この美術館もその立場に立っていますが、保存の方向に舵を切りなおすのは難しいだろうと噂されています。政府庁舎はオスロの中心地に建っていますし、この「The Fishermen」(漁師たち)は外から見られますので、機会がありましたら見れるうちに見ておいてくださいね。

この「The Seagull」(かもめ)も取り壊される予定のビルの内部、一階のレセプションエリアの壁にある作品です。

美術館の所蔵作品の一つ、ピカソ作「肘掛け椅子の女」も展示されていました。

美術館の周りは彫刻公園になってますので、天気が良ければお散歩も忘れずに。オスロフィヨルドに突き出した岬に建っているので、フィヨルドビューも楽しめます。

最後にアクセス方法です。オスロ・バスターミナルか、王宮前のNationaltheatretという停留所から160番のバスRykkin行きに乗り、Hovinkoddenで下車します。乗車時間はターミナルからだと26分、Nationaltheatretからだと19分。バスを降りたら、車道の向こう側に美術館のある半島が突き出しているのがみえますので、そちらの方向に歩いていくと美術館の表示が見えてきます。バス停から美術館の入り口までは徒歩6~7分です。

今年から木曜日は22時まで開館していますので、夜もめいっぱい観光したい方、プランに入れてみてはいかがでしょうか。

【ヘニー・オンスタッド美術館(Henie Onstad Kunstsenter)】
住所:Sonja Henies vei 31, 1311 Høvikodden
FAX:+47 67 54 32 70
開館時間:金曜~日曜・火曜・水曜 11時~17時、木曜 11時~22時、月曜休館
ホームページ:http://hok.no/en/art-center

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